遊びを通した育ち ~数の概念~

 運動会のシーズンになり、普段よりも園庭で走り回る子どもの姿が多く見受けられます。園庭に線を引いておくと、憧れていた年長児のリレーをしてみようと集まる年少児の姿があります。年少児は3人と4人のチームで普通に競争しています。彼らにとって人数を調整して勝ち負けを競うという意図はほとんどなく、リレーをする姿が嬉しいのです。年長児のように早く走っているイメージで楽しんでいるようです。人数が違っても問題が起こることはなく、エンドレスに何回も走ることを楽しんでいます。年中児のなると人数を合わせることに拘りが出てきます。リレーをしようと集まってきた人数が7人だと、3人と4人のチームに分かれるのですが、一人足りないということに気付き、近くにいる仲間に声を掛けてリレーに参加することを促します。それでも集まらない時は、誰が2回走るかを協議してリレーを始めます。年中児にとっては人数を合わせて勝負することに拘りが出て来るのです。また、勝ち負けへの意識も強くなってきます。

 リレーではないのですが、年長児がドッチボールをする時に面白い光景に出会いました。ドッチボールをしようという呼びかけに応じた人数が11人だったのです。ルールを決めてチームに分かれるのですが、1人人数が足りないことに気付きます。近くにいる友達に呼びかけ人数を合わせようとするのですが、新たな参加者はいません。そこで、人数の少ないチームにAくんとBくんを集め、人数が違うけれどAくんとBくんがいるのだったら少なくてもいいのではないかという提案がされたのです。それを皆は納得して楽しそうにドッチボールを始めました。この姿を見て、同じ実力にするのには単なる人数合わせだけでなく、それぞれの力量も勘案して平等であることを考えている姿を見て、私は一人で感動していました。

 社会に役立つ数概念で、補正係数という概念があります。集積したデータをより精度の高いものに変換するには、生のデータだけを使うこともあるのですが、そのデータを補正してより現実的なものに修正する場合があります。年長の子どもたちは、ドッチボールと言う遊びを通して、本人たちは意識していないのでしょうが、平等にするには人事を勘案して、実力を同等にするという修正を行っているのです。この内容をある勉強会で報告した時、ドッチボールをする時に人数の違いを、人の調整ではなく、コートの広さを調整して遊んでいるという事例が報告されました。これもまた、人数の違いを解決する素晴らしいアイデアだと感心しました。子どもたちが遊びを通して学んでいる内容は、社会生活との結びつきが強い重要な内容を含んでいるのだという認識が世界で広がっているのです。