幼稚園での育ちの中での数の概念とは

「次に、けんたくんが乗ってきたら、男が3人になるな。女が2人やから、男の方が多くなる。」小型の園バスに乗っていると、子どもから様々な会話が聞こえてきますが、乗っている人数の会話は多く見られます。これが大型のバスなら人数の会話は、多くの子どもが乗ってくるまでの話になるでしょう。小さな空間で、数えなくても人数が感覚的にわかる数の範囲で子どもが乗り降りする小型バスの良さが発揮できます。わざわざ数えなくてもある程度の数までは見ただけでわかります。この感覚は、幼児期でも大人になってからでも大きな差は見られません。10を超える数を、数えなくても分かることは難しいでしょうし、5から7くらいまでの数なら、数えなくても感覚でわかります。幼児期にはこの数の範囲で、数に対する様々な考え方を身に付けて欲しいのです。

 

年長児にクッキーを焼く活動を提案しました。1グループを5人程度にして材料を渡し、思い思いの形に成形してオーブンで焼きます。少し多い目の材料を渡しておくと、1グループに7・8個のクッキーが出来上がります。オーブンを見て色の変化を楽しむ子どももいれば、形を作る時に星型であるとか、丸型であるとか拘りを持っていても、焼き始めると興味が薄れる子もいます。そして焼きあがったクッキーをグループに持ってくると、5人で分けるのに余った2個や3個をどうするかで議論がでます。「園長先生にあげる」という子もいました。割って分けようとする子もいました。それぞれに5人のグループで出来上がった7個や8個のクッキーを、どうすれば納得できるように分けるかが話し合われていました。この活動は、数の概念を育てるためにしているわけではありませんが、人数よりも少し多い目に出来上がったクッキーを分けるという作業は、割り算の概念を育てるには面白い活動だと思っています。「余りがでる」ということは7÷5=1あまり2という概念ですし、「割るといい」ということは7÷5=1と5分の2という分数概念が生まれています。幼稚園生活を通して自分に必要な数概念を育てることに意味があるのです。この活動の時に、「もう少し焼こう」という言葉も返ってきました。マイナス概念も子どもは獲得しているのです。

 

数の概念を育てるというと、1+2=3と言った計算概念を育てると間違われがちですが、そのような単純な育ちではなく、もっと数学の奥に潜む概念の育ちが期待されているのです。バスの子どもが「ゆきえちゃんが乗ってきたので、(弟の)ひろまさくん一人で寂しそうだね」と言った子どもがいました。バスに乗っている方から見れば乗ってきて一人増えるのですが、幼稚園に行くお姉ちゃんを見送ったひろまさくんは、取り残されて一人になってしまいました。ある事象を反対から見るという哲学的概念も、もうこの時期に育っているのです。